
MT(マニュアルトランスミッション)車を想像する人が多いスポーツカーだが、最新のスポーツカーではほとんどがAT(オートマチックトランスミッション)車となっている。
人気漫画の「頭文字D」や映画「ワイルド・スピード」シリーズでは、マニュアルシフトのギアチェンジをするシーンが魅力的で、頻繁にそれを見せるところが登場する。スムーズにギアチェンジをしながら加速したり急カーブを攻めるのかが見所であるから「スポーツ=マニュアル」のイメージがとても強い。
しかし、最近のスポーツカーはシフトレバーはおろか、レバーの代わりにボタン式やダイアル式に切り替わってきているAT車のみのモデルが増えているという。
実例として、ホンダ新型「NSX」やフェラーリなど多くのスポーツカーに「ボタン式」のシフトスイッチが普及しているのを見るとそれを感じ始めている人も多いのではないか。
ホンダ新型「NSX」にボタン式を導入
「NSX」といえば、ホンダのスポーツカーでも代表する車種。
初代はMT車が主軸で販売されていましたが、昨年の2月に販売された新型ではAT車のみとなった。センターコンソールにはシフトレバーはなくなり、4つのシフトスイッチ「P」「R」「N」「D/M」とパーキングブレーキの操作ボタンが搭載されている。
ホンダの広報担当によると、MTモデルを設定せずボタン式シフトを採用したATモデルのみの設定した理由として、このクラスのスポーツカーに求められるハイパワーや速さ、レスポンス、パフォーマンスを実現するために、それにふさわしいトータルシステムパッケージを検討した結果だという。
MTではなく9速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)と、センターコンソールからシフトレバーを廃止したエレクトリックギアセレクターを採用したことで、ドライバーの手の届きやすい位置にスイッチ類を集約し、ドライブスイッチは斜め前方へのプッシュ式でリバーススイッチはプル式とするなど、ブラインド操作をも可能とする操作性を実現。人の感覚に合わせた設定にしている。
また、ハンドル裏にあるパドルシフトでもギアチェンジすることができる為、シフトレバーが無くてもシフトのUP/DOWNは任意ですることはできる。スポーティな運転ができなくなったわけではなく、逆にハンドルから手を放さず運転に集中できる。
高いダイナミクス性能をフルに体感することができ、新たな感覚を味わうことができるのがこのこのパッケージの成果なのである。人が自身でギアチェンジを行うよりも、コンピューター制御されたATでギアチェンジするほうが、クルマが持つ性能をフルに引き出せるということだ。
センターコンソールもスッキリしたことで、車内の区間にもゆとりができ、レイアウトの自由度が高くなった。これにより、インテリアのデザインにも幅が増えている。
実は70年も昔から存在していたボタン式シフト
ボタン式シフトセレクターは近代的なシステムだというイメージがあるが、実は1950年代にアメリカ車「エドセル」や「パッカード」「ダッジ」などはこれを採用していた。
しかしながら、当時はモーターなどの部品が信頼性が低く、不具合が多かったために中止となった。技術の進歩につれて何の不安もなく実用的に使えるようになった現代だからこそ再復活したシステムなのである。
MT車が減少していくのは従来のスポーツカー好きにとっては、どこか寂しい思いもあるが、
ドライビングスキルが高い人にしか味わうことのできなかったスポーツカーのフルの性能が人を選ばず楽しめるということについては、素晴らしいことではないだろうか。
時代の流れに合わせてクルマも私たちの価値観も徐々に変わっていくのだろう。